Q3.カウンセリングや心理療法は、どうしてこんなに高額なのですか?

 

A. どう回答したら納得いただけるのか、難しい質問です。

   昔、私は窯元で数万~数百万円の器を見せていただき、作家の方に金額はどうやって決めるのかと質問したことがあります。作家の方は苦笑いしながら、「一つの作品にかかるのは土と水、釉薬代くらいですが、作品として世に出すためには、技術やセンスを磨くのにかけてきた私の時間というものがあります。それを乗せています。出来上がったものをその額に見合うものとして評価していただけるかどうかは相手の方にかかっていますが、私自身はこの額を譲れないものとして提示しています」とお答え下さいました。

 カウンセリングや心理療法は、芸術作品ではないけれど、似たようなことが言えると思います。「話を聞く」にあたっての知識や技術についての継続的な勉強・研修・トレーニングに、それこそ時間もお金もかけて取り組んできています。来所される方に、個人の経験談の押し付けではなく、説得でもなく、その方の持っている力が発揮されるように(主体性の回復、はぐくみ)、理論や技法について学んできています。カウンセリングや心理療法は、私の時間と私の得てきたものを、相談においでになる方に使っていただく時間であると考えています。

 大学の相談センターに勤務していた時は、1回50分3,000円でした。「臨床心理士養成機関として実習生が関与することがあるので一般的なカウンセリング料金よりは安く設定されています」と来所される方には説明していました。また、「カウンセリングや心理療法は通常は一万円くらいはかかるもの。大学は医療機関ではないけれど、半分公的といえるような機関なので、3割負担で3,000円と考えて下さい。自分のこの時間には1万円かけているのだという思いで臨んでいただきたいと思います」と説明することもありました。お金のことをやたらに強調するカウンセラーだと思われたかもしれません(笑) が、カウンセリングや心理療法をより効果的なものとするための働きかけの一つでした。 

 低額や無料であることが重要な機関もあります(公的機関など)。ですが、私がこのオフィスでしようとしているものは、来所する方ご自身に自分の時間とお金をかけて取り組んでいただきたい、私は時間と場所と心理士としていろいろ積んできたものを提供しますので、おいでいただく方には私を使ってご自身のこととして取り組んでいただきたいというものです。

 無料のものは大事にされない、些末なもの、価値のないもののように扱われることもままありますね。人によっては無料であるがために、気を遣って話したいことが話せなかったりもするようです。「支払っているからこそ、自分の時間として遠慮なくぶつけられる」とおっしゃる方もこれまでお会いする中ではおられました。

   ごちゃごちゃと書きましたが、要は、おいでいただき、ご自身にとって役立つものになりそうか否か、いろいろ話す中で体験して考えていただきたいということです。